がんについて相談する

肺がん

疾患概要

肺がんは我が国の死因割合の1位である悪性新生物の中でも1位となっています。診断には専門的な診察・検査が必要となります。肺がんは非小細胞肺がんと小細胞肺がんに分けられ、非小細胞肺がんは更に腺がんや扁平上皮がんなどに分けられます。それぞれの組織型によって治療法が異なるため、組織検査を行う必要があります。また、病気の広がりをみて病期を決定するため、全身の画像検査が必要となります。比較的早期と考えられる場合には外科的切除を、完全切除が困難だが遠隔転移がない場合は放射線と化学療法を、遠隔転移が認められるような場合には化学療法が治療の主体となります。

治療について

肺がんの治療は、非小細胞肺がんと小細胞肺がんで戦略が大きく分けられます。小細胞肺がんは比較的進行が速いことが知られていますが、全病変に放射線治療が可能な限局型の場合は放射線治療と化学療法の併用を、遠隔転移が認められる場合には化学療法を行います。
非小細胞肺がんでは、比較的早期と考えられる場合には外科的切除を考慮します。遠隔転移が認められるような状況では、化学療法が治療の主体となります。また、放射線治療が可能な場合には、放射線治療と化学療法の組合せが標準治療となります。昨今ではがん細胞の遺伝子変異についての検査を行い、特定の変異が陽性の場合には分子標的薬による個別化治療が推奨されています。

手術(外科治療)

右の肺は上葉・中葉・下葉からなり、左の肺は上葉と下葉からなります。左の上葉は更に上区と舌区に分かれます。PET検査や頭部MRI検査で病変の広がりを調べ、遠隔転移がなく切除可能と考えられる場合には外科的切除を行います。基本的な外科的切除の術式は肺葉切除と所属リンパ節郭清となります。呼吸機能やがんの発生した位置によっては、部分切除を行うこともあります。術後、病理医により画像の検査では捉えきれなかった細胞レベルでのリンパ節転移などが見つかった場合には、化学療法を追加で行うことがあります。また、最近では周術期治療として、術前に免疫療法を含む化学療法を行うこともあります。

放射線治療

放射線治療にはいくつかの異なる目的があります。まずひとつ目に、限局型小細胞肺がんや、化学放射線治療の対象となる非小細胞肺がんに対する、根治的照射が挙げられます。ふたつ目に、脳転移や骨転移といった、症状の原因になり易い病変に対する姑息照射が挙げられます。みっつ目に、限局型小細胞肺がんに対し、根治的化学放射線治療後に、脳転移の予防目的に行う予防的全脳照射があります。

また、本来外科的切除の対象となるところが、年齢や合併症、全身の状態から手術を受けることが難しい場合、代替治療として放射線治療を行うこともあります。

薬物療法

小細胞肺がんに対する薬物療法は、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1抗体が第一選択となりますが、年齢や合併症などを考慮し、治療を行います。
非小細胞肺がんについては、組織型、遺伝子変異の有無や、がん細胞のPD-L1タンパクの発現割合、肝臓や腎臓といった臓器の機能や合併症の有無など、多岐にわたる要素を鑑み、最適な治療法を選択することとなります。特定の遺伝子変異が陽性である場合は、分子標的薬が第一選択となります。遺伝子変異が陰性であった場合、プラチナ製剤+細胞傷害性抗がん薬+免疫チェックポイント阻害薬の組合せが最も一般的な治療方法となります。一方で、特定の合併症があると使用できない薬剤もあり、個別に選択する必要があります。

治療実績

当院では年間約100件の新規肺がんの診断を行い、7~80件の初回治療を実施しております。

肺がん 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
診断総数 86 80 110 90 101
初回治療実施数 56 55 80 66 74