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脳腫瘍

疾患概要

脳腫瘍は脳内にできる腫瘍で、脳の細胞が変化して生じて腫瘍化したもの(原発性脳腫瘍)、他の臓器のがんが脳に転移してできたもの(転移性脳腫瘍)があります。原発性脳腫瘍は年間10万人あたり10-20人程度が罹患する希少がんとして扱われ、約100種類以上の病理組織型が存在することが知られています。原発性脳腫瘍のうち悪性脳腫瘍は神経膠腫(グリオーマ)に代表され、他に脳悪性リンパ腫の珍しい腫瘍等、様々あります。また最新のWHO分類では、これまで良性腫瘍とされてきました下垂体腫瘍を悪性腫瘍に分類したり、同一の病理診断としていた悪性脳腫瘍を予後の違い等を、ある遺伝子変異の有無で細分化したりするなど、刻一刻と変化しています。悪性脳腫瘍の治療は、手術による摘出の他に、化学療法や放射線治療等を組み合わせ、治療を行うこと(集学的治療といいます)が極めて重要です。近年医学の進歩により治療効果の高い薬剤が登場することで奏功率も上昇し、また手術においてもナビゲーション、モニタリング、術中蛍光診断を駆使しながら、機能温存を主眼としながら最大限の摘出を目指す治療を心がけています。

治療について

神経膠腫について治療の基本は、機能温存に最大限の注意を払った上での手術加療を行い、疾患グレード、遺伝子変異を考慮して放射線単独、化学療法単独、放射線+化学療法の後療法が選択されます。予後の良い神経膠腫で40歳未満の若年、かつほぼ全摘出が達成できた場合には何もせず経過観察となることもあります。
脳悪性リンパ腫の場合は、化学療法の治療反応がとても良いとされ、手術にて必要最小限の摘出で診断確定後は、速やかな化学療法、放射線治療導入にて寛解を目指していきます。
下垂体腫瘍をはじめとしたトルコ鞍近傍腫瘍については、低侵襲の内視鏡を使用した手術治療を初期の頃から積極的に導入しており、国内有数の手術症例数を誇り当院で扱う代表疾患の一つです。また下垂体腫瘍術後のホルモン補充療法についても、患者さんに応じた適切な治療法を提案しています。
転移性脳腫瘍(脳転移)については、他臓器の原発巣の状況にもよりますが、化学療法は一般的に無効とされ、放射線が治療の基本となります。放射線のみでは腫瘍制御困難な場合、手術加療について併用することで、患者さんの予後延長に寄与するものと考えています。

手術(外科治療)

摘出術を行う場合は開頭手術が基本となります。なるべく手術による侵襲を低減、また機能温存をめざすために術中ナビゲーションや脳機能マッピング等のモニタリング、術中蛍光診断(5ALA)を駆使しながら、摘出率の向上に努められるよう努めています。

下垂体腫瘍に代表されますトルコ鞍近傍腫瘍の場合は鼻腔を経由する内視鏡下手術での摘出術を積極的に行い、基本的に開頭手術を行うことなく、低侵襲の手術を目指します。

放射線治療

原発性脳腫瘍(神経膠腫)の放射線治療

術後の残存腫瘍と周囲の微視病変を制御し根治を目指す治療です。経口の抗がん剤と同時併用で行います。治療は1日5回を週1日、計25~30回(5~6週間)行うことが基本ですが、高齢者や全身状態の不良な患者さんでは3週以内での治療が選択されることもあります。1回の治療時間は15分程度です。 高精度放射線治療の技術を用いて周囲の正常脳組織への影響の低減に努めています。

転移性脳腫瘍の放射線治療

脳転移の大きさや数により定位的放射線治療から全脳照射まで対応可能です。5mm以下の小病変などで定位照射専用機(γ-knife等)の方が適すると考えられるのは積極的に可能施設に紹介しています。

薬物療法

悪性脳腫瘍で化学療法が必要な場合、腫瘍の種類に応じて化学療法を選択しています。
神経膠腫の場合、テモゾロミドを使用しての治療が基本となります。さらにアバスチンを積極的に併用し、なるべく良好なQOLが維持できるよう努めています。
脳悪性リンパ腫の場合、メソトレキセートを主体とした化学療法を選択しますが、最近はリツキサンも併用する化学療法にて腫瘍寛解状態の維持に努めています。

治療実績

脳腫瘍手術件数

2022年 2023年 2024年
脳腫瘍摘出術 2 6 6
経鼻的腫瘍摘出術 22 57 52
その他 0 1 2