皮膚悪性腫瘍

疾患概要

皮膚がんは皮膚に発生する悪性腫瘍の総称で、主に基底細胞癌、有棘細胞癌、乳房外パジェット病、悪性黒色腫(メラノーマ)などがあります。中でも悪性黒色腫は進行が早く、早期発見と適切な治療が生命予後を大きく左右します。当センターでは、ダーモスコピー、各種画像検査や病理検査を用いた正確な診断を行い、病期に応じた手術・薬物・放射線療法を組み合わせた集学的治療を実践しています。形成外科・皮膚科・腫瘍内科・放射線治療科が緊密に連携し、根治性と生活の質(QOL)の両立を重視した医療を提供しています。

治療について

悪性黒色腫(メラノーマ)では、原発巣の完全切除に加え、腫瘍厚や潰瘍の有無に応じてセンチネルリンパ節生検を行い、転移の有無を正確に評価します。浸潤性黒色腫と診断された時点で病期判定のためにPET/CTや造影CTなどによる全身検索を行います。リンパ節転移が明らかな場合には治療的リンパ節郭清を行い、進行例では免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬による全身治療を実施しています。手術・再建は機能性・整容性を重視したは形成外科が担当し、手術不能例や転移巣への局所照射など一部の症例では放射線治療科と協働する場合もあります。多診療科によるチーム医療で、根治性と生活の質(QOL)の両立を目指します。

手術(外科治療)

悪性黒色腫の手術は、原発巣の腫瘍厚に応じた安全域を確保した切除を基本としています。病理診断や臨床所見に応じてセンチネルリンパ節生検を行い、転移の有無を評価します。リンパ節転移が明らかな場合には治療的リンパ節郭清を実施します。切除後の欠損に対しては、部位や大きさに応じた最適な再建法を選択し、整容性と機能の維持を図ります。皮膚がんセンターでは年間100例以上の皮膚悪性腫瘍手術を行っており、そのうち約20%が悪性黒色腫です。術後は再発予防を含めた長期的なフォロー体制を整えています。 

放射線治療

  1. 悪性黒色腫
    悪性黒色腫に対する放射線治療は、手術が困難な症例や再発例、または遠隔転移に伴う症状緩和を目的として行われます。当院放射線治療科では、電子線・X線・定位放射線治療を適切に使い分け、正常組織への影響を抑えながら局所制御を図っています。腫瘍内科・形成外科と連携し、根治治療が難しい症例に対しても、QOLを維持した集学的治療を提供しています。
  2. 基底細胞がん、有棘細胞がん
    切除困難例の根治目的や術後腫瘍床やリンパ節領域の術後再発予防目的で治療します。
    1日1回の治療を週5日、計30-35回(5週間)行うことが多いです。1回の治療時間は10分程度です。
  1. 悪性リンパ腫
    放射線感受性の高い腫瘍で、4週以内で治療できることが多いです。
    菌状息肉症に対する全身皮膚照射は当院では行っておらず、他施設への紹介となります。
  2. 再発巣、転移病巣に対する緩和照射
    がん病巣に起因する種々の辛い症状を緩和する目的で行います。1-10回の小数回で行うことが一般的で、治療に伴う副作用はごく軽度です。

薬物療法

悪性黒色腫の薬物療法は、非常に進歩しています。とくに、免疫チェックポイント阻害剤は悪性黒色腫の治療を根本から変革しました。従来は、手術不能とされた遠隔転移のある悪性黒色腫に対しては、既存の化学療法はほとんど歯が立たなかったのが、免疫チェックポイント阻害剤により、長期間、がんを制御できるようになりました。また、BRAF阻害剤という分子標的薬も、有効な薬物療法です。当院では、悪性黒色腫に対する薬物療法を腫瘍内科医が専門的に対応しています。また、免疫チェックポイント阻害剤は、特徴的な、免疫関連有害事象(irAE)がありますが、当院では、irAEチームで専門的に有害事象に対応しています。

治療実績

当センターの皮膚悪性腫瘍に関する診療実績は、皮膚がんセンター公式ホームページにて公開しております。年間の手術件数や疾患別症例数など、最新の情報は以下のリンクよりご覧いただけます。

皮膚がんセンター診療実績・治療のご案内

地域のクリニックとの密な連携体制

悪性黒色腫の診療では、地域の皮膚科・形成外科クリニックとの連携を重視し、紹介患者さんに対する早期診断と迅速な治療を行っています。治療終了後は速やかに紹介元へ情報をフィードバックし、地域全体で皮膚がん治療の精度を高めています。