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肝細胞がん

疾患概要

肝臓がん(肝がん)は、肝臓に発生する悪性の腫瘍です。最も多いのは肝臓の細胞そのものから発生する肝細胞がんで、その多くはB型・C型肝炎ウイルスの持続感染や非アルコール性脂肪性肝炎などの慢性的な肝臓の炎症・損傷(慢性肝炎、肝硬変)を背景として発症します。

初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な画像検査(超音波、CT/MRI)や腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-IIなど)によるスクリーニングが重要です。治療法は、がんの大きさや数、肝臓の機能などに応じて手術(切除、移植)、局所療法(ラジオ波焼灼術など)、動脈塞栓術、薬物療法などが選択されます。予防には、ウイルス性肝炎の治療や生活習慣の改善が不可欠です。

治療について

肝細胞がんの治療は、がんの進行度、肝機能、全身状態に基づき多岐にわたります。

主な根治的治療は、手術(肝切除、肝移植)とラジオ波焼灼療法(RFA)です。RFAは、小さながん(例:3cm以下、3個以内)に対して、身体への負担が少なく有効性が高いです。

根治が難しい場合や進行した病態では、カテーテルを使い、がんへの血流を遮断する肝動脈化学塞栓療法(TACE)や、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬による全身薬物療法が行われます。また、放射線治療も選択肢の一つです。

治療は、これらの方法を患者さんの状態に応じて使い分けたり、組み合わせたりして行われます。

手術(外科治療)

当院では、日本肝胆膵外科学会が認定する高度技能指導医、専門医と日本肝臓学会が認定する肝臓専門の外科医が在籍しており、年間を通して、多くの肝がん(肝細胞がん、肝内胆管がん、転移性肝がん)症例の手術を行っています。手術は従来の開腹術と腹腔鏡手術やロボット支援手術といった、患者さんの身体への負担を軽減し、より傷が小さい低侵襲手術も数多く行っております。ロボット支援肝切除術は従来の腹腔鏡手術では技術的に困難であったものを克服し、精緻かつ自由度の高い手術操作が可能となりました。また、術後の回復が早いのが特徴です。
肝門部領域胆管癌は、肝臓に近い胆管に発生する悪性腫瘍です。治療には高度な技術が必要とされます。当院では、日本肝胆膵外科学会が認定する高度技能指導医、専門医が常駐しており、随時、治療に当たっております。肝門部領域胆管がん手術は、肝臓と胆管を含めた切除が必要とされ、切除した胆管は消化管(空腸)と繋ぐ(吻合)ことが行われます。肝切除の術式には多くのバリエーションがあり、比較的大きく肝臓を切除するため、安全面を第一に、術前の入念な準備と術後管理を行っています。肝臓の60%以上を切除(大量肝切除)するケースもあり、術前に残肝容積を大きくする処理(門脈塞栓術)を行い、術後の肝不全を回避し、安全に行えるようにしています。

放射線治療

  1. 切除不能肝がんに対する放射線治療
    単発で小さなものでは定位的放射線治療で治癒が目指せますが、金属マーカーの肝臓内留置や厳密な呼吸移動対策が必要となり当院では実施していません。
    大きなsizeのものでは重粒子線治療の保険適応となりますので積極的に重粒子線治療施設(神奈川がんセンター等)に紹介しています。
  2. 門脈腫瘍栓に対する姑息対症的放射線治療
    1日1回の治療を週5日、計25~30回(5~6週間)行うことが基本です。
    1回の治療時間は10分程度です。
  3. 再発巣、転移病巣に対する緩和照射
    がん病巣に起因する種々の辛い症状を緩和する目的で行います。1-10回の小数回で行うことが一般的で、治療に伴う副作用は、患者さんの状態により異なりますが、多くは軽度です。

薬物療法

肝細胞がんの薬物療法(全身療法)は、主に手術や局所療法が難しい進行した症例や転移がある場合の標準治療です。
中心となるのは、がん細胞の増殖シグナルを阻害する分子標的薬と、免疫の力を利用してがんを攻撃させる免疫チェックポイント阻害薬(ICI)です。
特に近年、ICI単剤や、ICIと分子標的薬を組み合わせた併用療法が一次治療として良好な治療成績を示し、標準治療の一つとなっています。
肝機能(予備能)が保たれていることが前提で、薬剤の種類や投与方法は、患者さんの病態や肝機能の状態を考慮して選択されます。副作用管理も重要になります。

治療実績

幅広い治療に対応しています。